昔のあかり生活体験会 イベント実施報告 日本のあかりの歴史と文化研究調査委員会
委員 海老名健一

1.はじめに
 当委員会主催のイベント「昔のあかり生活体験会」を開催した。
 今回は、前回の委員内によるパイロット開催を踏まえた一般開催となる。
 このイベントは火を使っていた時代の生活や、その中で使われた灯火器であかりを得る事で、昔のあかりの中でどの様に生活をしていたのかを体験し、理解を深める事を目的としている。
2.イベント内容について
「昔のあかり生活体験会」
 実施時期 :2026年1月27日(火)13:30~19:00
 会 場  :名栗すこやか村(埼玉県飯能市大字上名栗989)※元かしわぎ旧邸
 参加者  :12名

 主  催 :日本のあかりの歴史と文化研究調査委員会
3.会場について
  •  会場は埼玉県飯能市の上名栗という地域で、入間川の上流域の山間に立地している事から林業が盛んで自然豊かである。
     会場の名栗すこやか村は明治初期に建てられた古民家を利用した宿泊施設で、囲炉裏やかまどが現存する山村文化の歴史を伝える文化財的施設である。通常は囲炉裏やかまど、灯火器の使用は禁止の施設であるが、管理人様やオーナー様との交渉により、当イベント限定で特別に利用の許可を頂く事ができた。
4.イベント企画にあたって
 折角に山村文化が残る古民家を利用させて頂く事ができるので、使用する灯火器は一部山村でも使われていた灯火器を選別した。
 又、飯能市教育委員会が発行している名栗の民俗(上)を参考に上名栗の食文化を調査し、夕食は日常で食されていたスイトンを献立とした。
 尚、火気の使用は十分な注意が必要な為、火元の管理はスタッフが行い、管理が難しい部分については灯明や蝋燭の明るさやゆらぎを再現した特注のLED光源を利用する事で安全性を考慮した。
5.使用灯火器について

 使用灯火器は下図の通り。
 スタッフの管理ができない廊下、便所、座敷は安全の為、LED 光源や既設の電灯を利用した。

6.行程について

 行程は下表の通り。行程の時間は進捗状況によって変動する。

行 程
12:20〜 受付開始→建物内見学(希望者のみ)
13:00〜 薪割り体験(希望者のみ)
13:30〜 集合→挨拶→説明→柏木さんのお話→記念撮影
14:30〜 火打箱で火起こし体験→囲炉裏に火入れ
15:00〜 竈に火入れ→荏胡麻油搾り体験→おやつ(蒸したサツマイモ、お茶)
16:30〜 行灯の点灯
17:00〜 行灯のあかり体験→囲炉裏で夕食作り(スイトン)
18:00〜 囲炉裏を囲んで夕食→松灯蓋・たんころ・龕灯のあかり体験
19:00〜 終了→提灯と龕灯でお見送り(最終バス 19:25 発)
7.行程の解説
 各行程は以下の通り行った。
 尚、集合時間より早めに会場入りした方は建物内見学と薪割り体験を行った。
受付開始・建物内見学[12:20〜]
  •  参加者は受付後にスタッフの案内にて会場となる建物内の見学を行った。
     この古民家は現オーナーである柏木氏の分家 で、養蚕に対応した造りとなっており、リフォームされていながらも囲炉裏の煙抜きが残されていて囲炉裏本来の機能が残っている貴重な建物である。

薪割り体験[13:00〜]
  •  希望者のみ薪割り体験を実施した。
     薪割り用の海老鉈や横斧で市販の薪を小割りし、囲炉裏や竈の燃料として活用した。
     安全対策の為にフェイスガードをして頂いた。

集合・挨拶・説明[13:30〜]
  •  参加者全員が会場に到着した為、イベントを開始した。当日は天候が良かった為、屋外の縁側にて講師やスタッフ紹介、イベントの趣旨、注意事項を説明した。

柏木様のお話[13:45〜]
  •  名栗すこやか村代表理事の柏木正之氏から名栗地域の歴史やこの建物の事をお話し頂いた。
     柏木正之氏は、名栗村(現在は飯能市と合併)の元村長で、現在は温泉旅館「大松閣」を運営されており、分家の親戚が住んでいた本会場の古民家を維持管理されている。

火打箱で火起こし体験[14:30〜]
  •  マッチが普及するまでの長い間一般的に使われていた火打箱を使って火起こしを行う。
     火打金と火打石で火打ちを行い、火花を消炭でできた火口に落として火種を作り、付け木の先(硫黄のついた部分)を火種に付ける事で着火させる。
     火打箱を4個使い、4グループに別れて参加者全員で火起こし体験をして頂いた。

囲炉裏に火入れ[15:00〜]
  •  参加者の内から代表で1名の方に火打箱にできた火種から付け木を使って囲炉裏に火を入れて頂いた。囲炉裏の自在鉤には鉄瓶をかけて、お湯を沸かした。

竈に火入れ[15:10〜]
  •  参加者の内から代表で 1 名の方に囲炉裏でできた熾火を十能にのせて、竈に火を入れて頂いた。竈はこの後の荏胡麻油搾り体験の荏胡麻の焙煎や蒸しの作業で使用する。

荏胡麻油搾り体験[15:20〜]
  •  参加者各々で荏胡麻を焙烙で焙煎し、すり鉢で潰し、蒸籠で蒸し、圧搾器(締め木)で油搾りを体験した。
     搾った油を片口の器で受け、参加者に回覧して油の匂いを感じて頂き、行灯にのせてある油注ぎに移した。(今回は油は 3g 程度しか搾れなかった)

おやつ(蒸したサツマイモ、お茶)[15:40〜]
  •  囲炉裏の鉄瓶のお湯が沸いた為、休憩でお茶を頂いた。お茶はこの名栗地域の歴史にもなっている名栗銘茶を土瓶で煎れた。
     荏胡麻を蒸している時に同時に蒸していたサツマイモもお茶請けとして頂いた。

行灯の点灯・行灯のあかり体験[16:50〜]
  •  行灯の説明を行い、荏胡麻油搾りで得た油を使って(荏胡麻油は僅かしか搾れなかった為、菜種油と混合した)行灯の点灯を行った。
     参加者の中から希望者の方に行灯の灯明皿の灯芯押さえを使って火のついた灯芯を掻き立てたりして、調光の操作を体験して頂いた。

囲炉裏で夕食作り(スイトン)[17:10〜]
  •  料理担当のスタッフに下拵えをして頂いたスイトンの鍋を囲炉裏の自在鉤にかけて夕食作りとして参加者数名にスイトンの生地を鍋に入れて頂いた。
     この頃には部屋が暗くなってきて、鍋の中が見えなかった為、囲炉裏に挿した松灯蓋にひで(松の脂の多い部分)を焚いてあかりとした。

有明行灯のあかり体験[17:30〜]
  •  夕食のスイトンができるまでの間、座敷に移動して有明行灯の説明の後にあかり体験をして頂いた。(安全の為に光源は3本灯芯の灯明のあかりを再現した特注 LED 光源を使用)
     あかり体験では浮世絵でよく描かれている蚊帳と行灯の画を再現して、蚊帳の紗を通してのあかりの体験と寝た時の枕元のあかりとして有明行灯の調光のあかり体験をして頂いた。

囲炉裏を囲んで夕食[18:00〜]
  •  夕食のスイトンができた為、囲炉裏を囲んで夕食を頂いた。お新香として昔ながらの原材料と製法で作られた、たくあんと梅干しも頂いた。

たんころ・龕灯・ひで鉢のあかり体験
  •  夕食の間にたんころ、龕灯、ひで鉢のあかり体験を行った。たんころは参加者に回覧して手に持ってあかり体験して頂いた。龕灯は蝋燭の蝋垂れの心配がある事から、講師が龕灯の説明の後に土間で龕灯のあかりを確認して頂き、ひで鉢も土間で焚いて夜鍋仕事のあかりとしてあかり体験をして頂いた。

終了・記念撮影[19:00〜]
  •  行程が予定通り完了してイベントが終了した。終了の挨拶の後に全員で記念撮影をした。
     バスで帰る参加者にはバス停までの間を提灯と龕灯のあかりでお見送りをした。
     (提灯は安全の為に5匁和蝋燭のあかりを再現した特注 LED 光源を使用)

8.注意事項について

 当イベントは極寒の時期に段差の多い古民家にて暗い環境の中で火を使うという現代人にとっては悪条件で危険を伴うイベントの為、主催側の安全対策と共に参加者にも以下の注意事項を遵守して頂いた。

【注意事項】

  • • 大雪などで会場までのバスが運休した場合や近隣で熊による人的被害情報が出た場合は中止又は延期とさせて頂きます。
  • • 冬季の会場は極寒の為、防寒着や暖房用品など各自で防寒対策をして下さい。
  • • 囲炉裏や竃は火の粉が飛ぶ事がある為、服装はウールや厚手の綿などの比較的燃えにくい素材にして下さい。
  • • 会場は暗く段差が多い為、勝手に別室や屋外に移動しないで下さい。
  • • 火の使用の際はスタッフの指示に従って下さい。
  • • 酒酔いによる火の使用は危険な為、飲酒は厳禁とさせて頂きます。
  • • 会場の物を汚したり、壊してしまった場合は、速やかにスタッフに報告して下さい。
  • • カメラ及びスマートフォンなどの操作は注意散漫になり危険な為、又あかり体験に支障をきたす 為、基本的に使用は禁止とさせて頂きます。(行程毎に撮影タイムを設けました)
  • • 緊急の電話が必要な場合は休憩室にて応対をお願いします。
  • • 学会の広報及び報告資料としてスタッフが写真及び動画撮影をさせて頂きます。映り込みたくない方は事前にスタッフに連絡をお願い致します。
  • • 行程は状況に応じて変更をさせて頂く場合があります。

 尚、主催側の安全対策については前回のパイロット開催での反省点を踏まえて、基本的な安全対策の他に以下の点を強化致しました。

薪割り時の怪我対策について
 前回は薪割り時に飛散した切屑が顔に当たり怪我人が出た為、今回は草払機用のフェイスガードをする事とスタッフが補助する事で安全対策をした。

火起こし体験時の火花対策について
 火打箱で火打ちをした際に出る火花が床板に落ちると床の杉板が僅かに焦げる事を実験にて確認した為、今回は円座の上で火起こしをする事で対策をした。
 尚、耐火性の養生シートを使う案もあったがイベントの性質上、古民家にある身近な物として円座を使う事にした。実験にて円座も僅かに焦げる事を確認しているが、小生の所有物である事から無視をした。(火打ちの火花では円座に引火しない事も実験にて確認をしている)

油染み対策について
 前回は油搾り体験時に気がつかぬ間に油がこぼれて建物に油染みをつけてしまった為、今回は油を置く場所を制限した上でスタッフの監視の元で油搾り体験を行った。
 又、座敷での有明行灯のあかり体験時は有明行灯を操作する際に油をこぼす可能性がある事から LED 光源で代用する事で対策をした。

火の安全対策について
 灯火器を実際に灯す上に囲炉裏や竈を使う事から、火傷や火事に対しては細心の注意が必要だが、今回は前回よりもスタッフを増員し役割分担を明確にした事により、常に火の管理や参加者の監視ができる体制を整えた。

寒さ対策について
 会場の飯能市名栗地区は山間部で 1 月は極寒の時期の為、今回は参加者への事前の寒さ対策の注意喚起をした上で、寒さに耐えられない方が出る事を想定して、別室を休憩室としてファンヒーターによる暖房の用意を行った。

熊対策について
 会場の飯能市名栗地区は山間部で熊の目撃情報が出ている為、基本的な熊対策として熊鈴・ホイッスル・熊スプレーの携帯、常時屋外にてラジオを流して置く事、食材の臭いを漏らさない様に防臭袋の準備、熊出没時の行動手順書の準備、緊急連絡先の準備などをする事で対策をした。

9.スタッフについて

 当イベントは委員からは5名、会場関係者からは3名の体制で行われた。
 今回は前回のパイロット開催の反省点を踏まえて、安全性を確保する為に委員のスタッフを2名増員した。前回は講師の海老名委員が撮影を兼任していた事で、余裕がなく安全性を欠如した為、原田委員を写真撮影役として増員した。又、参加者の管理役として内田委員を増員したが、事情により欠席となった為、ビデオ撮影役を予定していた花柳幹事が参加者の管理役に変更した。それに伴いビデオ撮影は行わなかった。
 会場関係者からは名栗すこやか村代表理事の柏木氏と管理人の柴田氏に会場の利用に対するご対応を頂いた。又、柏木氏には名栗地区や会場の建物の歴史などをお話頂いた。
 大森氏には昔(昭和 30 年代)のスイトンの材料などの調査、当日は下拵えなど料理を担当頂いた。又、囲炉裏や竈を扱える事から火の管理をして頂いた。

委 員

  • ・講師:海老名委員(イベントの企画、計画、調整、灯火器や古民具などの準備、行程進行 )
  • ・スタッフ:太田 委員(会場の手配、交渉、保険の手配、行程進行の助手、参加者の管理)
  • ・スタッフ:花柳 幹事(受付、行程進行の助手、参加者の管理)
  • ・スタッフ:原田 委員(灯火器や古民具などの運搬、設営、写真撮影)
  • ・スタッフ:内田 委員 ※事情により欠席

会場関係者

  • ・名栗すこやか村代表理事:柏木正之氏 (会場のオーナー、名栗地区のお話)
  • ・名栗すこやか村管理人 :柴田三四郎氏(会場の管理、窓口)
  • ・発酵料理教室 haccobo :大森美登里氏(スイトンの調査、夕食の準備、囲炉裏と竈の管理)
10.おわりに
  •  前回のパイロット開催で抽出された反省点に対して様々な対策をした事で無事にイベントを終える事ができた。今回は一般開催ということで定員10名の募集であったが、定員を上回る12名の応募があり、急遽計画を練り直して12名での開催に踏み切った。
     その後に追加の応募(キャンセル待ち)があったが、スペースや安全性の問題から12名までが限界で、残念ながらこれ以上に定員を増やす事ができず、受け入れる事ができなかった。
     因みに、囲炉裏周りは10名で満席の為、今回は2名分を詰めて座って頂く事になり、多少の窮屈感はあったと思う。
     定員が増えた事で参加者の管理を満足にできるか懸念していたが、スタッフを増員した事と、参加者の方々が注意事項を遵守して頂いた事が成功に導いてくれたのだと思う。

 前回と同様に今回も参加者にアンケートをお願いして、12名中9名の方々に回答を頂き、お陰様で皆様から高い評価を頂く事ができた。参考になるご意見も頂けた為、今後の課題として検討した。
 最後に。前回に引き続き本来は使用を禁止している灯火器や囲炉裏や竈の使用を許可頂き、会場をお貸し頂いた名栗すこやか村の代表理事の柏木正之氏と管理人の柴田三四郎氏に厚く御礼を申し上げる。

以上

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